雨洗の峰・ 八ヶ岳南麓より南アルプスを望む
久しぶりの雨が、冬の乾いた大地を黒く染め上げ、足早に東の空へと去っていった。

雨上がりの午後。濡れたアスファルトが鈍い光を放ち、洗い清められた大気は、痛いほどに透き通っている。
八ヶ岳南麓に住むようになって、まもなく10年を迎えようとしている。毎日変わる山々の光景は、飽きさせることはない。これは何物にも代えがたい贅沢だ。
慣れ親しんだこの場所から、視線を西へと向ける。

そこには、圧倒的な質量を持って鎮座する南アルプスの峰々があるはずだ。しかし今、その峻険な稜線は、雨が生み出した厚い雲のヴェールに閉ざされている。ただ、それは決して重苦しい景色ではない。

雲の隙間から、まるで舞台照明のように強烈な陽光が迸り、湧き立つ白き波濤を黄金色に縁取っているからだ。
地上から立ち昇る水蒸気が、光の粒子を孕んで輝く。
畑の土の匂い、冷たい風の感触、そして雲が山肌を駆け上がる音なき轟音。
空の「群青」と、雲の「純白」、そして大地の「濡羽色」。
冬の日は短く、光と影のコントラストは刻一刻とその様相を変えていく。
私は寒さを忘れ、ただ祈るようにシャッターを切った。
自然が見せる一瞬の気まぐれが、これほどまでに劇的であることを感謝しながら。
そんな光景を楽しむのも、神社の杜のワーキング・プレイス 8MATOの醍醐味。温かくして皆さんをお迎えいたします。


