森で、血液が入れ替わる。 八ヶ岳南麓で見つけた、五感を取り戻す場所


森で、血液が入れ替わる。 八ヶ岳南麓で見つけた、五感を取り戻す場所

八ヶ岳南麓の森に居を構えて、来年で10年目を迎えます。初めのころは、ここへ来ること自体がエンターテイメントのひとつでした。薪作りや草刈り、森の探検など、新しい趣味を楽しむ場所として、毎週末ここへ来ることが待ち遠しく、東京へ戻るときは、いつも後ろ髪を引かれる思いでした。

そんな八ヶ岳との関係を大きく変えるきっかけとなったのがコロナ禍です。仕事は全てオンラインとなり、東京にいなければならない理由はなくなりました。八ヶ岳で過ごす時間が延びるとともに、改めてこの地が「特別」であることを強く感じるようになったのです。

私にとってこの「特別」とは、「血液が入れ替わる心地よさ」と表現するしかありません。言葉で表すのは難しいのですが、森、空、風、水、音、匂いなど、五感がいつも総動員で、季節や時間を伝えてくれるのです。ひとつの「何か」ではありません。全てが一斉にやってくるのです。 例えば、夏の森で過ごしていると、木々の葉や枝を騒がせながらヒンヤリとした風が吹き寄せ、ゾクッとする。木々は様々な香りを放ち、鳥は啼き、動物は走り、草や枝が身体に触れ、虫が目の前を飛び去っていく。そんなことが同時に起きるわけです。 五感を一斉に刺激される心地よさは、ますます五感の感度を高めてくれます。たぶん、自分もまたそんな自然の一部であることを受け入れ、五感を解放する。そうすると、ますます森は自分の身体と一体となっていく。そんな感覚が、「血液が入れ替わる心地よさ」なのかもしれません。

都会では、味わうことのできない感覚です。たぶん都会でも、五感を解放することはできるのかもしれません。しかし、まわりを満たす機械的な音、石油やホコリの匂い、他人の声や息づかいが心地良いわけがありません。だから、都会では知らず知らずのうちに、私は五感を閉じてしまっていたのでしょう。 それが一気に解放されることで、身体の奥底に閉じ込められている本来の自然が活動を開始する。そんな本来の状態に戻れることが、この心地よさの正体なのかもしれません。

さて、そんな「特別」のある場所で、誰もが気楽に働くことができる場所を作ったら、都会から人が来てくれるはずだと閃いたのが、コロナ禍の頃でした。そう、ただ「閃いた」だけなのです。ならば!ということで立ち上げたのが、「神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO」というわけです。

ビジネス的な合理性、つまり資金調達や採算性などといったことは、まったく考えませんでした。「きっとおもしろいぞ!」という気持ちだけがモチベーションであり、行動を起こす原動力でした。「お金のことなど、なんとかなるだろう」という考えでした。そして、いまもなお、「お金のことなど、なんとかなるだろう」という楽天的な状態です(笑)。

最初は、地元の集落にある古民家を借り、リノベーションしてコワーキング・プレイスでも立ち上げようかと思っていました。しかし、なかなか良い場所が見つかりません。その理由のひとつは、貸してくれる人がいないという現実です。 私が住む山梨県北杜市大泉町は、田んぼや蕎麦畑がひろがる地域です。その合間に集落が点在しています。集落の空き家率は6割ほどといわれ、漆喰の蔵を構えた大きな住宅も少なくありません。そんな空き家を借りようとしたのですが、貸そうという人がほとんどいないのです。これには驚きました。

話を聞けば、そんな空き家の多くは親の家ではあったが、子供世代はみんな都会に出てしまい、親が亡くなってそのままになっているところが大半です。ならば、貸してくれそうなものなのですが、仏壇がある、親の代からの家財道具も捨てられないなどの理由から、他人に使わせたくないという事情があるようです(実は、もうひとつ大きな理由があるのですが、これについてご興味があれば、直接お話しいたします)。

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さて、そんなわけで古民家を諦めて、新築で建てることにしました。たまたま、地元の不動産屋さんが「神社に隣接する森ならばありますよ」と教えてくれました。その場所を訪れ、一瞬で惚れ込みました。"This is the place!" まさにそんな場所でした。(「ここだ!」「夢が叶う場所だ」と直感しました。)

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鬱蒼とした森、東に開けた丘の上で、瑞牆山や金峰山、茅ヶ岳などの甲州の山々を間近に望み、里山の向こうに遠く富士山を望む絶景の場所でした。ただ傾斜地であり、建物など建てられるはずがないということで、驚くほど安価に譲っていただくことができました。

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広さは2700坪、そのほとんどが傾斜面です。森は篠竹、赤松、唐松が生い茂り、その合間に小楢や山桜などの広葉樹が生える混合樹林です。丁度見に来たのが4月。萌える広葉樹の薄い緑の光につつまれ、瞬時に魅了されました。 この森は、以前から知っていた場所です。八ヶ岳南麓に居を構えたころ、よく散歩に来たところでした。鬱蒼とした森を抜けたところに、古い神社のお社がありました。その神秘的とも言える森に建物を建てるということがどういう意味なのか。私は何かのお告げを受けたような感覚で、資金のことなど考えず、紹介してくれた不動産屋さんに購入する旨を告げたのです。

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ただ、傾斜地に建物を建てるというのは容易なことではないと分かっていましたし、それ以上に、何か特別なこの森を穢したくはないという想いもどこかにありました。 実はそれ以前に、日本の伝統工法や木材の地産地消にこだわっている工務店と知り合っていたこともあり、彼らならこの森や地形を活かした建物を建ててくれるはずという確信もあって、すぐにその工務店の社長とこの森にやってきました。そして、「おもしろそうですね。やりましょう」ということになりました。

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私には、もうひとつ外せないこだわりがありました。それは、この森の再生です。 戦後の建設ブームもあって、建築材料となる赤松や唐松が全国で植林されました。しかし、安い外国産の木材が大量に輸入されるようになり、日本の森は経済価値が下がってしまい、手入れのされないまま放置され、結果として"鬱蒼の森"になってしまったところが沢山あります。この森もそんな場所のひとつだったようです。木々は密集し、折れた木々は放置され、暗く、憂鬱な森でした。

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この森の針葉樹を伐採し、広葉樹だけのサヤサヤとした森に作り変えたいというこだわりです。伐採した針葉樹は製材して建物の建材にし、建材として使えない木は薪ストーブの燃料にすればいい。そんな森の再生計画も合わせて始めることになりました。そして、いよいよ建物の建設がスタートしたのです。

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はじめこそ順調でしたが、いざ建設を始めると、いろいろと大変なことが起こりました。一時は「建設中断?」というところまで追い込まれましたが、なんとかそれを乗り越えて、いまの8MATOがあります。その物語については、後日改めて紹介させていただきます。

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最後に、今年も多くの皆さんとの出逢いに感謝し、締めくくりたいと思います。 年明けは、1月8日(木)からとなります。是非またお越しください。 それでは、良いお年を!

※ 元旦 7:00より、薪ストーブと焚き火とミカンで温々(ぬくぬく)しながら初日を拝む会を、8MATOの森に浮かぶテラスで行います。ぜひお越しください。参加費は無料です。

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【募集開始】ITソリューション塾・第51期

 2026年2月10日開講

時代の「デフォルト」が変わる今、ITソリューション塾・第51期の募集を開始します。

https://www.netcommerce.co.jp/juku/embed#?secret=030mkAIOJ9#?secret=Tli8zTpUk5

ITソリューション塾は2009年の開講以来、18年目を迎え、これまでに4000名を超える卒業生を送り出してきました。

開講当時、まだ特別だった「クラウド」は、いまやコンピューティングの「デフォルト」です。そして18年目のいま、社会は急速に「AI前提」へと移行しつつあります。

これは単にAIの機能が向上したということではありません。ビジネスや社会のあらゆる現場で実装が進み、AIがあらゆる仕組みの「デフォルト」になろうとしているのです。

第51期ではこの現実を受け止め、AI技術そのものの解説に加え、クラウド、IoT、システム開発、セキュリティなど、あらゆるテーマを「AI前提」の視点で再構成して講義を行います。

【ユーザー企業の皆さんへ】

不確実性が常態化する現代、変化へ俊敏に対処するには「内製化」への舵切りが不可欠となりました。IT人材不足の中でも、この俊敏性(アジリティ)の獲得は至上命題です。AIの急速な進化、クラウド適用範囲の拡大、そしてそれらを支えるモダンITへの移行こそが、そのための強力な土台となります。

【ITベンダー/SI事業者の皆さんへ】

ユーザー企業の内製化シフト、AI駆動開発やAIOpsの普及に伴い、「工数提供ビジネス」の未来は描けなくなりました。いま求められているのは、労働力の提供ではなく、モダンITやAIを前提とした「技術力」の提供です。

戦略や施策を練る際、ITトレンドの風向きを見誤っては手の打ちようがありません。

ITソリューション塾では、最新トレンドを体系的・俯瞰的に学ぶ機会を提供します。さらに、アジャイル開発やDevOps、セキュリティの最前線で活躍する第一人者を講師に招き、実践知としてのノウハウも共有いただきます。

あなたは、次の質問に答えられますか?

  • デジタル化とDXの違いを明確に説明できますか? また、DXの実践とは具体的に何を指しますか?
  • 生成AI、AIエージェント、エージェンティックAI、AGIといった「AIの系譜」を説明できますか?
  • プログラミングをAIに任せる時代、ITエンジニアはどのような役割を担い、どんなスキルが必要になるのでしょうか?

もし答えに窮するとしたら、ぜひITソリューション塾にご参加ください。

ここには、新たなビジネスとキャリアの未来を見つけるヒントがあるはずです。

対象となる方

  • SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
  • ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
  • デジタルを武器に事業改革や新規開発に取り組む皆さん
  • 異業種からSI事業者/ITベンダー企業へ転職された皆さん
  • デジタル人材/DX人材の育成に携わる皆さん

実施要領

  • 期間:2026年2月10日(火) ~ 4月22日(水) 全10回+特別補講
  • 時間:毎週 水曜日 18:30~20:30(※初回2/10など一部曜日変更あり)
  • 方法:オンライン(Zoom)
  • 費用:90,000円(税込み 99,000円)

受付はこちらから: https://www.netcommerce.co.jp/juku

※「意向はあるが最終決定には時間かがかかる」という方は、まずは参加ご希望の旨と人数をメールにてお知らせください。参加枠を確保いたします。
講義内容(予定)

  • デジタルがもたらす社会の変化とDXの本質
  • ITの前提となるクラウド・ネイティブ
  • ビジネス基盤となったIoT
  • 既存の常識を書き換え、前提を再定義するAI
  • コンピューティングの常識を転換する量子コンピュータ
  • 変化に俊敏に対処するための開発と運用
  • 【特別講師】クラウド/DevOpsの実践
  • 【特別講師】アジャイルの実践とアジャイルワーク
  • 【特別講師】経営のためのセキュリティの基礎と本質
  • 総括・これからのITビジネス戦略
  • 【特別講師】特別補講 (現在人選中)

「システムインテグレーション革命」

AI前提の世の中になろうとしている今、SIビジネスもまたAI前提に舵を切らなくてはなりません。しかし、どこに向かって、どのように舵を切ればいいのでしょうか。

本書は、「システムインテグレーション崩壊」、「システムインテグレーション再生の戦略」に続く第三弾としてとして。AIの大波を乗り越えるシナリオを描いています。是非、手に取ってご覧下さい

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。

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